今年のドラフトで指名された選手が契約金6,000万円、年俸1,000万円で仮契約したというニュースがありました。契約金だけですごい金額です。6,000万円に対する税金はどれくらいになるか、簡単に解説します。
契約金にかかる税金
契約金にかかる税金は、所得税と住民税です。住民税は都道府県民税と市町村民税とで構成されます。所得税はその年に稼いだ収入、住民税はその年の前年に稼いだ収入をベースに計算します。「社会人2年目になると手取りが減る」と言いますが、それは住民税の計算方法が理由です。社会人1年目に給料から天引きされる住民税は前年(つまり学生時代)の収入がベースなので大きな額にはなりませんが、社会人2年目に給料から天引きされる住民税は社会人1年目時代の収入がベースなので、社会人1年目のころよりも多くの住民税が天引きされてしまいます。
所得税額の計算(特例なし)
プロ野球選手の契約金は「平均課税の特例」の適用を受けることができますが、いったんこの特例の適用を受けない税額を計算してみます(年俸部分は、同額の経費がかかったと考えて所得0で計算します。所得控除は捨象します)。計算は国税庁ホームページに掲載されている速算表で行うと早くて便利です。
参考 所得税の税率国税庁ホームページ課税される金額(=所得金額)は6,000万円ですから、所得税額は次のとおり計算します。
これで、手取り額が37,796,000円であることがわかりました。なお、翌年には所得金額の約10%の住民税(つまり600万円くらい)が課税されるので、それ込みで考えると手取りは約3,100万円となります。だいたい、契約金の半分くらいが税金で持っていかれる計算ですね。
所得税額の計算(特例あり)
では、所得税額の計算の特例(平均課税の特例)の適用を受けた場合はどうなるのでしょうか。平均課税の特例における所得税額の計算方法は、おおざっぱに言えば次のとおりです。
残りの部分・・・20%部分の税率を適用する
では、計算してみましょう。
1,200万円に対する所得税額・・・1,200万円×33%-1,536,000円=2,424,000円
6,000万円 × 20% = 1,200万円
1,200万円 × 33% – 1,536,000円 = 2,424,000円・・・(①)
※計算には先ほどの速算表を使うと便利です
2,424,000円 ÷ 1,200万円 = 0.202
(6,000万円 – 1,200万円)× 0.202 = 9,696,000円・・・(②)
2,424,000円 + 9,696,000円 = 12,120,000円
計算方法は以上です。計算の結果、平均課税の特例を適用した場合の所得税額は12,120,000円になりました。特例の適用をしない場合の所得税額は22,204,000円なので、特例の適用を受けることでかなりの額が節税できました。なお、住民税には平均課税の特例がないので、翌年の住民税額は先の例と変わりません(600万円)。よって、特例の適用を受けた場合の手取り額は約4,200万円となります。特例の適用を受けたとしても、契約金の30%くらいは税金で消えることになります。