令和3年度(2021年度)の税制改正大綱 個人課税 | kandtax

令和3年度(2021年度)の税制改正大綱 個人課税

税制改正大綱は「令和3年度税制改正の基本的考え方」(p.22まで)と、「令和3年度税制改正の具体的内容」(p.23以降)に分かれています。個人課税における主要な論点は次のとおりです(ページ数は「令和3年度税制改正の具体的内容」のものです)。

  • 自家用車の取得に係る税金の1%軽減が9ヶ月延長されます(p.96)
  • 住宅ローン控除の控除期間13年の特例の適用期間が延長されます(p.23)
  • セルフメディケーション税制の適用期間が延長されます(p.33)
  • 退職所得課税が見直しされます(p.35)
  • 所得税の確定申告義務が見直しされます(p.36)

個人課税以外の税制改正大綱の概要については別の記事をご覧ください。

令和3年度(2021年度)の税制改正大綱概要

自動車の取得にかかる税金

自動車、軽自動車を取得したときに支払う税金と言えば「自動車取得税」を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は自動車取得税は2019年9月末で廃止されています。その代わりに、現在では「自動車税環境性能割」という税金が自家用車の取得にあたって課されます

この「環境性能割」について、2021年3月末までに取得した自家用車については本来の税率よりも1%軽減することになっていましたが、今回の税制改正大綱ではこれを9ヶ月延長し、2021年12月末までに取得したものについて1%軽減するとしています。

住宅ローン控除の控除期間の特例

住宅ローン控除の控除期間は原則10年間ですが、消費税増税による影響を考慮し、時限的に13年間となっていました。今回の税制改正大綱では、2021年9月30日までに契約、2022年3月末までに居住を開始した住宅についてまで「13年間」の控除期間が適用されるとしています。

なお、住宅ローン控除適用対象の住宅の床面積制限も、今回の税制改正大綱で緩和されます。具体的には、これまでは床面積が50平米以上の住宅のみが適用対象でしたが、改正後では40平米以上の住宅が適用対象となりました。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は、一定の医薬品の購入額から12,000円を引いた金額が、通常の医療費控除の代わりに所得控除できる税制です。この税制は2021年12月末までの時限措置でしたが、今回の税制改正大綱によってその適用期間が5年延長されることとなりました。

また、セルフメディケーション税制の適用には、一定の健康増進のための取り組みを行った書類の確定申告書への添付が必須でしたが、2021年分の確定申告(つまり2022年3月15日までに提出する分)以降は添付が不要となりました。この改正は2021年分からなので、直近で提出する分(つまり2020年分)は確定申告書への添付が必要です。

セルフメディケーション税制については、別記事で詳しく解説しています。

セルフメディケーション税制って何?

退職所得課税

退職所得の金額は退職金から退職所得控除額を控除した金額の2分の1であるのが原則ですが、役員等としての勤務期間が5年以下の者の役員退職金部分は2分の1の措置の適用対象外でした。

今回の税制改正大綱では、これに加えて、勤続期間が5年以下の役員でない者へ支払う退職金についても2分の1の措置の適用対象外としました(ただし、退職金から退職所得控除額を引いた金額のうち300万円までは2分の1の措置が適用されます)。

所得税の確定申告義務

所得税について、所定の方法で計算した所得税の額の合計額が配当控除の額を超える場合は確定申告(確定所得申告)が必要でした。これが、今回の税制改正大綱では、配当控除の額を超える場合であっても控除しきれなかった外国税額控除の額、源泉徴収税額、予納税額があるとき(つまり、確定申告をしても確定申告により納付する税額が0円のとき)は、確定申告書の提出を要しないこととされました。この措置は、2021年分の所得税から適用されます。