副業の収入金額 どのタイミングで計上するのが正解? | kandtax

副業の収入金額 どのタイミングで計上するのが正解?

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。去年は少しずつ物事を動かした時期でした。今年は去年の蓄積を活かして、より大胆に動きたいと思っています。

さて、年も明けて2021年(令和3年)分の確定申告時期が近づいてきました。2021年に副業をスタートして、今回初めて確定申告を行う会社員の方もいらっしゃることと思います。この記事では、そうした方々に向けて副業の収入金額をいつ計上すべきかについて紹介します。

収入金額の計上時期?

本論に入る前に簡単なクイズを出します。

クイズ1

Aさん(会社員)はWebライターの副業をしています。クラウドワークスで受注したライティング業務につき、2021年12月1日にクライアントへ納品し、同月20日にクライアントの検収が完了しました。この業務に対する報酬がAさんの銀行口座に振り込まれるのは2022年1月15日の予定です。

この報酬は2021年の収入金額とすべきでしょうか。それとも2022年の収入金額とすべきでしょうか。

この問題について、「計上時期がいつかなんてどうでもいいのでは?」と思われた方もいるかと思いますが、雑所得の収入金額をいつ計上するか(これを所得の年度帰属の問題といいます)は、次の2点から極めて重要です。

  • 雑所得の金額が年20万円以下の場合は確定申告不要
  • 所得税は超過累進課税方式なので所得金額が多いほど税負担が重くなる

答えは「2021年の収入金額とすべき」です。ただし、2022年以降の所得税については例外規定が新設されます。

収入金額の計上時期の原則

まずは「2021年の収入金額とすべき」理由を解説します。

所得の年度帰属の問題については、対価に対する所得が発生したタイミングを基準とする「発生主義」の考え方と、対価を実際に収受するタイミングを基準とする「現金主義」の考え方があります。

Aさんの例でいうと、クライアントが納品物の検収を完了した時点(企業会計ではこの時点で売掛金/売上の仕訳を切ります)を基準とするのが発生主義、クラウドワークスから入金を受けた時点を基準とするのが現金主義です。

所得税法36条1項によれば、「各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする」としています。

ここで「収入すべき金額」とは、「収入すべき権利の確定した金額」と解されています。このことから、所得の年度帰属は原則として発生主義に基づいて判断します。よって、Aさんが受けた報酬は2021年の収入とすべきです。

収入金額の計上時期の例外

次に「2022年以降の所得税については例外規定が新設されます」という点を解説します。

結論からいうと、2022年分(2023年3月15日までに確定申告書を提出する分)の所得税からは、一定の人はその雑所得を生ずべき業務について現金主義の考え方に基づいて収入金額を計上できるようになります。

ここでいう「一定の人」とは、次の2つの要件を満たす人です。

  • 雑所得を生ずべき業務を行う居住者
  • その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円以下
クイズ2

Aさん(会社員)は2021年からWebライターの副業をしています(それ以前に副業をしていたことはありません)。2021年における副業の収入金額は400万円、必要経費は150万円でした。

また、Bさん(会社員)は2019年からプログラミングの副業をしています。2020年における副業の収入金額は350万円、必要経費は100万円でした。2021年は副業を休止していましたが、2022年から再開します。

AさんとBさんは、現金主義の考え方を適用できる「一定の人」に該当するでしょうか。

答えは、「Aさんは該当する、Bさんは該当しない」です。

Aさんは2022年の2年前(つまり2020年)に副業を行っていないため、「2022年の前々年分(2020年分)の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円以下」という要件を満たします。一方、Bさんは2020年分の収入金額が350万円ですのでこの要件を満たしません。

現金基準の判断は「所得金額」ではなく「収入金額」で行われることにご注意ください。

その他、上記の規定と同じタイミング(令和2年度(2020年度)税制改正)で、①前々年における雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が1,000万円を超える場合の確定申告書への収支内訳書の添付義務、②前々年における雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超える場合の現金預金取引等関係書類の保存義務が導入されました。

雑所得を生ずべき業務に関する令和2年度(2020年度)税制改正の詳細は下記リンクのPDFに詳しく記載されています(PDFの頁だと38頁から40頁、本文に振られた頁だと130頁から132頁が該当箇所です)。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/explanation/pdf/p093-160.pdf

まとめ

2021年分(2022年3月15日までに確定申告書を提出する分)における副業の収入金額は、対価を実際に収受したタイミングではなく、対価に対する所得が発生したタイミングで計上します

一方、2022年分以降における副業の収入金額は、その2年前の副業収入が300万円以下であれば対価を実際に収受したタイミングで計上することができるようになります(確定申告書への記載が必要です)。