インボイス制度と副業 副業ワーカーはいつまでに何をしたらいいの?(後編) | kandtax

インボイス制度と副業 副業ワーカーはいつまでに何をしたらいいの?(後編)

この記事は、インボイス制度と副業 副業ワーカーはいつまでに何をしたらいいの?(中編)の続きです!

インボイス制度と副業 副業ワーカーはいつまでに何をしたらいいの?(中編)

後編では次の事項をQ&A形式で説明します。

  • Aさんが適格請求書発行事業者を選択した場合の影響
  • インボイス制度に抜け道・抜け穴はある?
  • 筆者はどう対応しようと考えているか

説明は、引き続きA氏の質問に答えて行く形で進めていきます!

質問者A氏
質問者A氏

【質問者A氏のプロフィール】

飲食店を運営する会社に勤務する30代。3年前から飲食店ライターの副業を始めた。会社員としての年収は約500万円、副業の収入(20万円)から経費(5万円)を引いた金額は1年あたり約15万円程度。これまで確定申告をしたことはない。

質問10

私が適格請求書発行事業者になった場合、どれくらいの金額的インパクトがあるかを具体的に試算してもらえますか?

2023年における私の収入と経費は次のとおりだとしてください。

  • 会社員としての給料:500万円
  • 副業(飲食店ライター)の収入:22万円(消費税込み、源泉所得税控除前)
  • 副業の経費:5.5万円(消費税込み、いずれもレストランでの食事代)
  • 副業の収入も経費も毎月均等に発生するものとします
質問10への回答

Aさんの会社員としての給料は消費税と関係ないため考慮から外します。

消費税に関係するのは副業収入(22万円、税抜20万円、消費税2万円)と、副業経費(5.5万円、税抜5万円、消費税5千円)です。

結論から言うと、Aさんが2023年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、かつ2023年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合、2023年に納付すべき消費税額は5千円です。2022年以前(インボイス制度の導入前)における納付すべき消費税額は0円でしたので、2022年以前と比べると2023年の税負担は5千円アップします(なお、2024年以降は1万円のアップです)。

計算の過程は次のとおりです。

  1. まず、原則課税と簡易課税のどちらが有利かを検討します。Webライターのようなサービス業の「みなし仕入率」は50%ですから、「受け取った消費税」が「支払った消費税」の2倍より多ければ、簡易課税の方が有利です。Aさんの「受け取った消費税」は2万円、「支払った消費税」は5千円で、「受け取った消費税」は「支払った消費税」の4倍ですから、Aさんの場合は簡易課税を選択したほうが有利です。
  2. みなし仕入率が50%の場合、納付すべき消費税額は「受け取った消費税」から「受け取った消費税✕50%」を引いた金額です。Aさんの受け取った消費税は2万円、受け取った消費税✕50%は1万円ですから、Aさんが納付すべき消費税額は差し引き1万円です。
  3. もっとも、2023年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出した場合、消費税の課税事業者となるのは2023年10月1日からですから、2023年に限っては納付すべき消費税額は全期間の2分の1、すなわち5千円となります。
質問10への回答補足(原則課税の場合)

原則課税において納付すべき消費税額は「受け取った消費税額」から「支払った消費税額」を引いて計算しますから、Aさんが2023年の全期間において原則課税を選択した場合、納付すべき消費税額は1.5万円です(1.5万円は、2万円から5千円を引いて求めました)。

もっとも、2023年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出した場合、消費税の課税事業者となるのは2023年10月1日からですから、2023年に限っては納付すべき消費税額は全期間の2分の1、すなわち7千5百円となります。

質問11

インボイス制度に抜け道や抜け穴はありますか?

質問11への回答

ないです。免税事業者のままで適格請求書を発行するための抜け道や抜け穴はありません。

質問12

インボイス制度について、副業で税理士をやっているあなた(筆者)はどう対応しようと考えていますか?

質問12への回答

私も免税事業者で、かつ課税仕入れがほとんどない業種なので、課税事業者になると間違いなく税負担が増加します。税負担だけを考えると免税事業者のままでいるのがベストですが、何より税理士である自分が適格請求書を発行できないのも格好悪いな…と思っています(これは完全に主観です)。

「適格請求書を発行できないこと」が取引にどれだけ影響するかは各々の状況によって異なるでしょうが、全体的に見れば、売り手市場の業界ではさほど影響しない(つまり免税事業者だからといって取引から排除されたり、価格を下げられたりしない)のではないかと考えています。

一方、買い手市場の業界や動く金額の大きな業界(例:不動産業界)では、「大家が適格請求書を出してくれないのであれば他の事務所に移転する」という賃借人が出ることも想定されます。

話を戻すと、私がどう対応するかはまだ決めていません。幸いなことにまだ検討期間はあるので、もう少しどうするか悩もうと思います。

ここまでのまとめ

  • 適格請求書等発行事業者になった場合の金額的影響を考えるときは、簡易課税と原則課税の比較をすることを推奨します
  • インボイス制度に抜け道や抜け穴はありません
  • 私(筆者)自身がどう対応するかはもう少し悩みます