今年も年末調整の季節がやってきました。最近は多くの企業で年末調整の電子化が進み、「庶務担当の人が年末調整の用紙を持ってフロアを忙しそうに歩き回る」という光景も今や昔となりつつあります。
年末調整のソフトによっては、「あなたの今年の給与収入の見込額は850万円を超えますか?」と表示されるものもあります(私の勤務先もそうでした)。このような表示がされるようになったのは、昨今の税制改正の影響です。
昨今の税制改正によって、去年(2020年分)の所得税から、給与収入から引くことができる「給与所得控除額」が引き下げられました。2019年分以前の所得税における給与所得控除額の上限は220万円(給与収入の金額が1,000万円超の場合)でしたが、2020年分以降の給与所得控除額の上限は195万円(給与収入の金額が850万円超の場合)と、一気に25万円も控除額が減ってしまいました。このうち10万円は基礎控除額との入り組みですので、実質的に減ったのは15万円ですが、給与所得控除額が15万円が減ると年3万円から5万円程度の増税になります。
政府としては、「取れるところから取る」ということでしょうが、「給与収入は850万円を超えているが小さい子どもや重度の障害者がいて生活は決して楽ではない」という世帯も多くあります。そのため、「所得金額調整控除」という制度が新設されました。この制度は、23歳未満子どもや重度の障害者を扶養している給与収入850万円超の人に対して、減ってしまった給与所得控除額の一部を補填するものです(計算上は給与所得の金額からの控除)。
所得金額調整控除の金額は次のとおりです。
給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%
たとえば、給与等の収入金額が950万円の場合は、100万円の10%で10万円が所得金額調整控除額です。この場合、給与収入からマイナスできる金額は195万円に10万円を加えた205万円となります。この金額は2019年以前の215万円よりも10万円少ないですが、所得金額調整控除額を加味しない場合の195万円よりも10万円多い金額なので、まさに「中間地点」といった調整ですね。
なお、年末調整において所得金額調整控除の適用を受ける場合は、その年最後に給与等の支払を受ける日(通常は12月の下旬です)の前日までに、給与の支払者に所得金額調整控除申告書を提出する必要があります。これが、年末調整ソフトから「あなたの今年の給与収入の見込額は850万円を超えますか?」と聞かれる理由です。
以上、「年末調整の気になる金額」として、給与所得控除を紹介しました。次回は、配偶者(特別)控除を紹介します。