早いものでもう11月も下旬になろうとしています。「早く年末調整で使う保険料控除証明書の原本を提出してください。出さないのであればご自分で確定申告してください」とメールが総務担当者や経理担当者から来て、慌てて証明書を提出する方もいるのではないでしょうか。
年末調整の気になる金額として、前々回の記事では給与所得控除を、前回の記事では配偶者控除を紹介しました。今回の記事では、「そもそもどういう所得控除が年末調整の対象になるのか」を解説します。
所得控除の種類
所得控除の種類は時代によって異なります。かつては「概算所得控除」や「専従者控除」という所得控除もありましたが、現在は廃止されています。
2021年現在における所得控除は次の15種類です。このうち★をつけたものは年末調整の対象にならないため、自分で確定申告をして控除を受ける必要があります。
- 雑損控除★
- 医療費控除★
- 寄附金控除★
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 障害者控除
- 寡婦(夫)控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 基礎控除
年末調整で受けられるその他の控除
上記の所得控除の他、年末調整で受けられる税額控除もあります。それは住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)です。住宅ローン控除適用初年だけは自分で確定申告をしなければなりませんが、適用2年目以降は年末調整によって税額控除を受けることができます。
所得控除と税額控除って何が違うの?
所得控除と税額控除は、控除する(差し引く)段階に違いがあります。所得税額計算のステップに沿って説明します。
給与収入600万円に対応する給与所得控除額は164万円であるため、Aさんの所得金額は600万円から164万円を引いた436万円です。
Aさんが受けられる所得控除は社会保険料控除と基礎控除です。基礎控除の金額は課税所得2,400万円以下の人であれば誰でも48万円ですので、Aさんが受けられる所得控除額は48万円と85万円を足した133万円です。
Aさんの所得金額は436万円、所得控除の金額は133万円ですから、差し引き303万円が課税所得です。この303万円に所得税率を乗じますが、実際の計算においては国税庁が公表している速算表を使うと便利です。課税所得が303万円の場合、課税所得に10%を乗じた金額から97,500円を引くと所得税額が算定できます。つまり、Aさんの所得税額は205,500円です。
住宅ローン控除の金額は年末の住宅ローン残高の1%ですから、Aさんは10万円の税額控除を受けることができます。よって、Aさんの所得税額は105,500円になりました。
Aさんの復興特別所得税額は105,500円の2.1%なので2,215円です。この金額が所得税とともに課税されます。
まとめ
以上、所得控除について簡単に紹介しました。「所得控除」と「税額控除」の違いはお分かりいただけたでしょうか。
各種所得控除の特徴や留意点については、また別の記事で詳しく紹介します。